湘南なんていわないで

湘南って言葉のイメージに私はなんかひっかるものを感じています。これってなんだろうとちょっとだけ考えて見ました。みなさんはどう思いますか?

飲み屋でよくあるどーでもいい質問に「どちらにお住まいなんですか?」というのがありますが、私はこれがあんまり好きではありません。
「ええ、神奈川の葉山なんですよ」なんてこたえると決まったリアクションがあります。私は「くるぞくるぞ・・・」と思うのですが

たとえば、東京のとある居酒屋で、本日のおすすめ品のタコのから揚げ(300円)なんぞをつまみながら、向いの課長代理(38歳・妻子持ち・ローンあり)が、脂でてらてらした顔で上機嫌にこたえます。「いいですねえ、かくさん湘南にお住まいで。いよ!湘南ボーイ」などと大声を張り上げられて、寒さ氷点下。恥かしさ300%という場面とか。あるいは出張先のとあるバーのエンジ色のベロアのソファで、暗闇では魅惑的なホスちゃん(年齢限りなく不詳)から、薄い水割り(シーバスのボトルに入ったオールド)なんかをもらいながら一言。

「アラ、こちら湘南にお住まいでらっしゃるのね!ステキ」

その後、勝手にいとしのエリーやらお嫁においで(by加山雄三。ひどい時は裕次郎だ)なんかのカラオケのイントロが流れてくる瞬間。こういうアイタタな思い出とか・・・。こういう逃げ出したくなるようなシチュエーションのポイントは湘南という言葉です。理由は分からないけど、私はこの湘南という言葉がなんか、激しくこっぱずかしいのです。

ぴんときませんか?んじゃ、ちょっと思い付くまでに書いてみますが。湘南という言葉でどのくらいほっぺがりんごちゃんになるか試してみてください。

●テレビドラマで主人公がバーカウンターでつぶやく。
「あいつが湘南に帰ってきやがった」もしくは「ここ湘南の海にはそんなやつはいないぜ」
さぶっ、だめだああ。おれには言えない・・・

●湘南ボーイ
うう ーん、赤いなあ。

●湘南ラーメン
恥ずかしいだけでなく、なんか高くてまずそうですね(笑)きっとわかめとかはいってますね。

●湘南の海の見える家(1億円)

なんか東京で、チラシで織り込まれそうな不動産のキャッチフレーズですね。

●湘南電車
・・・このへんはいいですね。あれ?

●湘南平
遠足に行きたくなりますね。

●湘南高校
なんか頭よさそうですね!(あははは)

この湘南印というのは、バツグンの神通力を一部では持つようなのですが、当事者であるわれわれにはなんか恥ずかしい、口にしてはイケナイ、目を背けてしまうようなもののように思います。なぜでしょうか!(ここでどんと机をたたく)

一つは、ここ湘南では(笑 やっぱはずかしいフレーズ)みんなあまり「湘南」という言葉を使わないからでしょうか。湘南という言葉はマスメディアで目にする頻度ってすごく高いのですが、地元の人は日常的に湘南電車などごく一部の例外を除いて、湘南って単語は使わないです。ありゃあ外から見たことばですぜ。行政区分の中にももちろんないし、公的なものでいえば、悪名高い湘南ナンバーくらいでしょう。住んでるひとからすると逗子は逗子だし葉山は葉山、鎌倉は鎌倉でひとくくりなんかには語れないと思うからかもしれません。

二つ目にはエリアとしてどこまでも広がるあいまいさでしょうか。湘南とは、確か中国の言葉で都の南という意味と聞いたことがあります。このだんでいくとすごくおおざっぱなくくりで厚木から南の神奈川はすべて湘南と名前がつく可能性があります。「湘南といって何がわるい!」というように。これはなにも湘南だけではなくて、日本全国どこの景勝地でもあるようです。わかりやすいのは軽井沢で、コアは旧軽井沢、そこから中軽井沢、南軽井沢、北軽井沢新軽井沢と拡大を続け、安中から下仁田、小諸、草津口くらいまでのなかは全部軽井沢という無謀な広がりを見せています。どこまでも軽井沢、転じてどこまでも湘南。なんか安っぽい。

三つ目には湘南という言葉に付きまとうある種のいかがわしさです。どんなものでも、湘南というはんこをぽんと押す、もしくは湘南印の包み紙でくるめば、そしてヨットの一つでもあしらっておけば、まずかろうが、物が悪かろうがどんな怪しげな物でも2割増くらいで売れちゃうという現実があります。同じ物でも例えば、「三浦」、とか「相模」なんかのはんこよりは「湘南」のほうが高く売れるんでしょう。そうしたマーケティング的な理由から、湘南印があったりするのですね。よくお土産のせんべいに、どこのお土産にも化けることができるように「江ノ島」とかシールを貼ったようなものがありますが、あんな感じでしょうか。

葉山に限っていえば、ほんとは海があって、大きな蜘蛛もいるような自然があって、かつ東京に通えるというような町。そのただの町が居心地いいのに、無理矢理お化粧をそれもそれも安っぽい)のをしたようで。たとえて言うなら、田舎の成人式で見る新成人の縞の入ったスーツ姿みたいでやりきれない。湘南というそのもの言葉に重みが出てくるのはあとまだ何十年もかかるような気がしています。歩いている人みんなが、クルーザーにのった加山雄三だったり、アロハを着た桑田圭祐だったり、いわゆるイメージ的な湘南の人なわけでもなく、ビーサンに短パンで思い思いにゆるゆると休みがちに(笑)暮らしている町だったりするわけで、別に湘南という手垢がつきすぎの包装紙はいらないでしょう。
そろそろ、その包装紙はたたんでしまい、それぞれの町の名前で勝負したらいいのかな、なんて思ったりしています、ここ湘南では(あ、いっちゃった)。

以上ご参考になれば!なにか情報がありましたら掲示板にお願いします。